21



「どれがいいと思う?」
「ええっと・・・」
眩しいくらい光り輝く宝石たちを私は次々に睨みつけていく。

私たちはちゃんとジュエリーショップに到着。
清潔感のある広い店内に今は私達と数組の男女。
私は真剣にショーケースの中を見ていた。
「本当にどれでもいいんですか?」
数えたくないくらい0がついている値段を見て、念のため圭介さんに聞いてみた。
「ああ。花蓮に似合うものなら」
花蓮さんのような美女なら、ここにあるものすべて似合うと思いますが・・・。
とりあえず、値段は見ずに花蓮さんに一番似合うと思うものを選ぼう。
値段を気にしていたら一向に決まらなくなってしまう。
お店の中をグルグルと回って、ようやく2つに絞ってみた。
スリーダイヤのシンプルなペンダントとダイヤのついたハートが繋がっている
可愛らしいけど、ちょっと大人っぽさも感じさせるブレスレット。
「この2つがいいかなっと思ったんですけど・・・圭介さん、どう思います?」
「ああ、いいと思う。でも、ペンダントのほうは確か同じようなの持っていたから
 ブレスレットのほうにしよう」
「はい。でも、そんなにあっさり決めていいんですか?圭介さんがいいと思うも
 のは?」
「俺もこれがいいと思うから、いいんだ」
圭介さんはそう言って、にっこりと笑った。
う、笑顔が眩しい・・・
おそらくジュエリーショップが似合う男の人はこの人ぐらいだろうな。
カードでお会計をする圭介さんをじっと見ながら、私は考えていた。

「帰ろうか。花蓮が待ってる」
「はい。あ、ケーキってもう用意しましたか?それとも今日はどこかレストランに
 行かれるんですか?」
「いや、今年は家でと思ってたんだが。ケーキか。すっかり忘れてた」
「それじゃあ、花蓮さんがよく行くケーキ屋さんに連れて行ってもらってもいいで
 すか?ケーキ代は私に払わして下さい」
私のバイトで稼いだお金程度では花蓮さんに似合う物を買うのは難しい。
でも、ケーキくらいなら買える。
それを私からのプレゼントにしよう。
「わかった」
圭介さんは快く連れて行ってくれ、私はホールショートケーキを買うことができた。
ただ、さすが花蓮さん御用達のケーキ屋さん。
ヒロに何か奢るのはもう少し先になるだろうな、ふふふ。
私は寂しくなった自分の財布を見て、悲しみを通り越し、なぜか笑いたくなった。

                              ×××××

「おめでとう」
「お誕生日おめでとうございます」
「まぁ、まぁ、まぁ・・・」
帰ってきて、圭介さんと2人で花蓮さんにお祝いの言葉を言うと、花蓮さんは感激
したように私を抱きしめた。
「ありがとうっ。こんなに可愛い女の子をプレゼントにもらえるなんて・・・。たまには
 やるじゃない、圭介」
「なわけないだろ!早く離れろ!」
やはり、彼氏としてはたとえ女相手であっても彼女が誰かと抱き合うのはあまり気
分がよくないのだろうか?
私と花蓮さんは圭介さんによって引き離された。
離されたことをちょっと残念に思いつつも、私はケーキの箱を花蓮さんに差し出した。
「あの、これこの間頂いた所のケーキなのですが、よければ食べてください」
「あら、ありがとう。嬉しいわぁ。さ、あがって」
「いえ、これを渡しに来ただけなので。私はこれで失礼します」
恋人同士で誕生日を祝うのに、私が入っては邪魔になってしまう。
ケーキも渡せたし、私はもう帰るべきだろう。
そういうつもりで言ったのだが、花蓮さんが悲しそうな顔になった。
「帰っちゃうの?」
ん?
「圭介が嫌なら、部屋に閉じ込めておくから。一緒にケーキ食べてくれない?2人じゃ
 食べきれないわ」
え?
「おい。一美を引き止めるのはいいが、なんで俺が閉じ込められなくちゃいけないんだ
 よ」
花蓮さんの言葉に圭介さんが反応した。
それに対し、花蓮さんは腕組みをして答えた。
「邪魔だからよ」
「は?だったら、俺と一美を2人にしろ」
「なんで、あんたが一美ちゃん連れてくのよ。今日は私の誕生日よ!それに、あんたと
 2人きりになるより私の方がいいに決まってるでしょ。ね、一美ちゃん?」
「えっ?えっ?」
恋人同士なのだから、普通、花蓮さんと圭介さんで祝うものなのでは?
なぜ、私の取り合いのような感じになっているのだろう。
私は間に挟まれ、困惑していた。
「俺と一緒の方がいいよな、一美」
「何言ってるのよ。私よね?一美ちゃん」
私がどちらを選んでも、両者が納得しないような気がする。
そして、私に帰るという選択肢はないようだ。
2つの綺麗な顔が私の決断を待っている。
「えっと、3人でお祝いしませんか?」
私は結局、お邪魔させていただくことにした。
 







next back index novel home



inserted by FC2 system